オーディフィル公式ブログ

スピーカー工房「オーディフィル」の近況や、オーディオに関する話題。

サブウーハーの自作(14) 構造剛性振動板

前回に引き続き、いま試作しているサブウーハーの設計について説明します。

 

前作SW-1では、「構造剛性振動板」という振動板を搭載していました。

音の出る部分であるスピーカーユニットの中でも核になる、丸いコーン型のものが振動板です。

 

左が前作「SW-1」

 

振動板の問題点 「非軸対称振動」

ウーハーの振動板は、概してコーン型の形状をしています。これは大振幅をしながら、空気を前に押し出すためにとても合理的な形状です。

 

振動板には、紙のほか、カーボンファイバーや、金属といった、ヤング率の高い引張強度の大きな素材が使われます。

 

こうしたコーン型の振動板は、前後方向には極めて強い構造ですが、横方向からの応力に脆弱という欠点があります。

 

応力に弱い構造があると、そこで共振が発生します。音楽信号とは異なる動きをする共振挙動は、望ましいものではありません。

 

以下の画像の右側に示されるモーダル解析では、一般的な抄紙コーン振動板では、横につぶれるような振動をしていることが示されています。

 

JAS Journal 2016 Vol.56 No.1(1 月号) 【連載:Who’s Who ~オーディオのレジェンド~ 第 3 回】ダイヤトーンに生きる(その 2) 佐伯 多門」より

 

ブレークアップとして知られる中高音域の共振とは異なり、この横方向の共振、非軸対称振動は、中低音域で起こる特徴があります。

 

中低音域は、低音表現の質感表現に極めて重要な帯域です。この帯域での共振は、低音の倍音表現に大きな影響をもたらし、低音の解像度を大きく低下させてしまいます。

 

かつでのダイヤトーンはこの問題点を早くから指摘しており、ピュアボロンと並び立つダイヤトーンの顔でもある「アルミハニカム振動板」は、数々の名機で採用されてきました。

 

構造剛性振動板の基本設計

こうした設計思想をもとに、オーディフィルでは立体補強で構造剛性を高めた振動板を採用しています。

 

下図は、未対策のコーン型振動板の断面図です。センターキャップ付近はある程度の強度がありますが、コーン末端付近(エッジに近いところ)は、横方向からの応力に対して脆弱な構造です。

 

 

そこで、前作SW-1では、赤線で示したような補強部材を振動板に接合させることで、振動板の構造剛性を高めました。

 

 

言葉で書くと簡単ですが、振動板の表面に対してコンマ1mmでもずれないように補強部材を接合できるよう、何度も試行錯誤を重ねてようやく実用になるものです。

 

この構造剛性振動板のお蔭で、SW-1は、解像度が高く深みのある超低域再生を実現することができました。明確な旋律と、深く沈み込む低音の両立は、多くの方から満足のいく声を頂くことができました。

 

 

振動板の改良検討1 【試作A】

SW-1のユニットは非常に良い出来だと自負していますが、発売から4年が経ち、さらにスピード感のある高解像度な低音域を聴きたくなりました。

 

そこで、補強部材の全体のサイズを小さくして、振動板中央の剛性を高めた構造を試作してみました。(試作A)

 

左上が、SW-1搭載のウーハー。(構造剛性振動板STD)

右下が、今回試作したウーハー【試作A】。(中央部分の剛性重視)

 

双方とも構造剛性振動板であるのですが、若干キャラクターに違いを感じました。

試作Aは、低音のスピード感が極めて高く、メインスピーカーとの音馴染みに優れています。ただ、EDMなどの重くて硬い超低音の再生にはSW-1の方が好ましいとも感じる試聴結果でした。

 

念のため、試作Aに類似した構造で、重量や細かな寸法違いで数パターン試してみましたが、傾向はどれも同じでした。

 

 

振動板の改良検討2 【試作B】

改めてより大きな補強部材を用意して、構造剛性振動板をもつ【試作B】を作ってみました。

(※振動板重量が、先ほどの【試作A】と同じになるように調整しています。)

↑ エッジ直前まで、補強部材がきています。

 

【試作B】での補強部材の外径はSW-1と同等ですが、センターキャップ部分もリジッドに固定する方法を新たに採用しています。

 

 

【試作B】の振動板は、素晴らしいものでした。

瞬発力のあるアコースティックな打撃音から、EDMのような深みとパワーを感じる低音まで、自由自在に表現する能力がありました。

 

【試作A】では外周部の補強が不十分であったのに対し、【試作B】では外周部まで十分に補強できたことが、音質の差につながったのではないかと考えています。振動板外周部は、エッジの引張応力がかかる部分でもあり、そこの補強がEDMの最低域のパワー感や解像度の上昇に効いたのだと思われます。

 

磁気回路

振動板と並び立つ、ユニットの顔でもあるのが磁気回路です。前作でもすでに限界ギリギリの大きな時期回路を採用できており、ここは今回は踏襲することにしました。

 

 

まとめ

前作「SW-1」を超える低音再生のために、新たに補強部材の検討を行いました。

この補強部材の検討の結果、振動板外周の強度が重要であるという結果でした。

 

↑ 最新の補強部材が入ったウーハーユニット

 

 

次回は、とある場所に持ち込んでの試聴を行いましたので、それを書こうと思います。

どうぞお楽しみに!

 

 

<製品紹介>

アルミ筐体スピーカー「AluSteal」試聴会に行ってきました!

今日はアルミ筐体スピーカー「AluSteal」の試聴会に行ってきたので、そのレポートを書こうと思います。

 

 

このスピーカーを開発したのは、工場板金の老舗である佐藤製作所。

数メートルに及ぶ大型のものも含め、多種多様なアルミ製品を製造しています。

 

そうしたアルミ加工の技術をスピーカーに活かせるのではないか、という発案のもと、このスピーカーが生まれました。

 

 

試聴会では、①ガラス振動板ユニットの作品 ②メタル振動板の作品 ③マイカ混沙ペーパー振動板の作品。

 

②と③は、現在クラウドファンディングに挑戦しているとのこと。

 

①ガラス振動板の作品


まず、聴いたのは①のガラス振動板の作品。先日のステレオ誌でも注目されていたマークオーディオのAlpair 5Gというドライバーを搭載しています。

 

JPOPSを聴くと、研ぎ澄まされた解像度と、厚みのあるボーカルが感じられ、実にクオリティの高い音だと感じました。外観や素材から無機質な音ではないかという心配とは裏腹に、エネルギー感の強さが印象に残る音でした。

 

音が暴れやすいアニソンを鳴らすと、箱が鳴いていないメリットがより顕著に感じられました。クリーンな背景のなかで、ユニットの音がダイレクトに鳴っている印象を受けます。

低音は8cmの限界まで引き出され、厚みのある低音を聴かせます。柔らかめの質感ですが、ベースライン、ドラムともにタッチが明確で心地よいものでした。
 
この①の作品は、まだまだ調整したいという開発者のコメントもあり、今後が楽しみな作品ですね。
 
 

②メタル振動板の作品


こちらはマークオーディオのCHN40というメタルコーンユニットを搭載した作品で、クラウドファンディング受付中のものになります。
 
小さな見た目とは裏腹に充実感のあるサウンドで、ボーカルとベースが色濃く感じらるものでした。 定位は極めて良好で、クリーンな音場の中に、クッキリとしたフォーカスで浮かび上がるボーカルは、他にはない魅力あるものでした。
サウンドはクッキリ系ですが、余分な音が出ないことがそうした印象を与えているのであって、荒っぽい音源でも暴れることなく再生できる安心感があります。
 
 
低域はタイトでありながら、量感十分。ベースラインの動きが手に取るように感じられ、バスレフチューニングが上手く決まっているのだと思います。
 
真空管アンプとの組み合わせでも破綻はなく、より落ち着いた大人のサウンドになる印象を抱きました。エレキギター有機的な響きが実に心地よいものでした。
 
 

③マイカ混抄ペーパーコーンの作品

先の作品と同じくクラウドファンディング受付中の本作は、余韻を感じるボーカルが魅力的です。
適度に解れた表情は、オーソドックスな質感であり、肩の力を抜いて聴ける良さがあると感じました。
 
先のメタル振動板タイプと比べるとより若干低音は控えめですが、むしろウェルバランスとも感じられます。ベースやドラムは明瞭なので低音不足とは感じないでしょう。
 
真空管アンプでは、より一層持ち味が発揮され、女性ボーカルの肉声感は随一。手持ちの女性ボーカルを聴かせて頂きましたが、滲みのないボーカルを堪能することができました。この口径のフルレンジスピーカーとしては、かなり完成度が高いといえるでしょう。
 
 

アルミ筐体スピーカー「AluSteal」の音とは?

全体的に、付帯音や滲みの少ない音という印象です。素材固有の音が抑えられ、ユニットからの音を直接聴くような印象を受けました。
 
アルミで作ったからといって、シンバルが強くなることはなく、むしろクリーンな背景音が印象的な現代的なスピーカーだと言えますね。
 
癖が少ないのでどの音楽ジャンルでも大丈夫ですが、今回の試聴会で再生したようなPOPSやアニソンなどでその能力の高さを感じられるのではないでしょうか。
 
 

メタル振動板かマイカ混抄ペーパー振動板か?

クラウドファンディングでは、振動板違いの2機種を選ぶことができます。
 
まずメタル振動板は、音に滲みがなく、音像が極めて明確。クリーンな空間にボーカルが浮かぶ様子は、参加者からも感嘆の声が聞かれました。
 
その一方で、マイカ混抄ペーパー振動板はもう少し穏やかで、メタル振動板で感じられた傾向は弱まる傾向です。音に広がりがあり、ナチュラルな表情の音に触れることができると感じました。
 
音の好みで選んで良いと思いますが、自分なら、サブシステムとしての導入なら特徴の際立つメタル振動板。メインシステムとして日常的に使うなら、肌馴染みのいい音のマイカ混抄ペーパー振動板が魅力的だ思います。
 
 
 
ちょうどクラウドファンディングが始まったところですので、ぜひページを見ていただければと思います。
 
 
 
 
 

サブウーハーの自作(13) バスレフポート形状

今回製作しているのは、バスレフ型のサブウーハーです。バスレフ型のスピーカーには、低音を共鳴で増幅させる「ポート」用いられますが、今日はその形状について説明します。

 

サブウーハーは密閉型かバスレフ型か。

音楽再生には密閉型のサブウーハーが向いてると言われますが、世の中のHiFiスピーカーの多くがバスレフ型であり、私個人としてもバスレフ型には密閉型にはない長所があると考えています。

 

バスレフ型の長所としては、バスレフ共振周波数ではユニットの振幅が抑えられ歪が低下すること、軽量振動板であっても低域を伸長できること…などが挙げられます。

 

バスレフポートノイズの対策

バスレフ型で懸念されるのが、群遅延とポートノイズです。

前者は、箱容量を適当な値とすることで、聴感上気にならないレベルに抑えることができます。

 

今回は、後者のポートノイズについてお話します。細いバスレフポートの中を高速で空気が移動することで、その端面で乱気流が発生し、ノイズになると言われています。

 

その対策の一つとして、ポート端面にラウンド形状を設けることが知られています。

こちらは、世界で初めてラウンド型のバスレフポートを採用したとされる、1987年のスピーカーの図です。(米国特許4,213,515より)

 

感覚的に、こうしたラウンド形状が乱気流の防止に役立つことは想像できますが、もう少し詳しく調べていくと、ポート内部の乱気流の発生について調査がなされています。

 

こちらは2004年のRapoportらの論文に掲載されていた図でポートに入る空気の流れをシミュレーションした結果です。

 

広がり角度をもたない(0°)の形状では、乱気流の発生が確認されますが、30°の広がり角度を持たせることで、乱流の発生が抑制されています。

 

 

では、30°といわず、もっと大きな広がり角度のほうが好ましいのか?というと、そうでもありません。

 

 

1998年のN. B. Roozeらの研究では、端部のラウンドが大きなポート(上図、左)はポート内部で気流の渦が発生しやすいという、シミュレーション結果が示されています。

この渦の発生は、2002年の Alex Salvatti氏による音響実験でも検証されており、聴感上悪影響があるものだといえます。

 

こうした研究については、下記ページにまとめておきましたので、気になる方は参考にしていただければと思います。

バスレフポートの形状と音質

 

 

 

バスレフポートの作製

前作のSW-1でも、ポートノイズ低減のためのラウンド形状を設けていました。

SW-1

 

 

今回はその形状を一新し、最適な広がり角度である「30°」をを意識した形状にしてみました。

 

 

 

エンクロージュア内側はこんな感じ。

乱気流防止に効果があると言われている、バスレフポート内側のフランジを設けました。

 

 試作箱内部のポート端面

 

 

試聴

ポートノイズは、実用的な音量では測定による評価が難しいため、聴感での判定が主になりました。

 

 

無対策のポートをもつ試作機(写真右)と比べて、適切な対策がなされたポートをもつ今回の試作機(写真左)は、最低域のダイナミクスに優れる音が得られました。

 

40Hz以下の最低域の音の動きが、より克明であり、打楽器のエネルギーもしっかりと感じられる音になりました。

 

しかし、ポート形状による改善効果は、思ったより小さいもので、バスレフの基本設計(ポート長、箱容量)の差の方が、はるかに分かりやすい聴感上の差が出ていました。

 

また、今回の試聴はかなりの小音量で行っており、ポート内での乱気流の発生が少なく、ポート形状の差が掴みにくかったのかもしれません。

 

 

まだラワン合板で作った試作機ではありますが、前作のSW-1(製品版なのでフィンランドバーチ合板を使用、写真左)を凌駕するサウンドになっています。

 

もう少し詰めたい部分もあるので、また結果がまとまったら、こちらで紹介しようと思います。

 

 

続きはこちら

audifill.hatenablog.com

 

 

<製品紹介>

サブウーハーの自作(12)ユニット磁気回路の支持

前回は、バスレフ箱の調整を行い、聴感と測定の双方で満足のいく結果が得られました。

 

サブウーハーで重要なのは、メインスピーカーに溶け込むように鳴るかどうかです。

特にクロスオーバー周波数(今回は60Hz)から上の帯域は、メインスピーカーの低音と少なからず重なる部分なので、気をつけて確認をしたいところです。

 

最低域ではあまり問題になりませんが、エンクロージュアやユニット固定部分の共振は、100〜200Hzの質感に大きく影響します。言うまでもなく、可能な限り強固に作ることが望ましいです。

 

実験

今回は、ユニットの磁石部分を支柱に固定することで、ユニット周りの振動の基点を明確にすることを試みました。

 

 

十分な太さをもつ支柱を、背板から伸ばし、

そこへウーハーユニットを載せます。

 

ユニットのフレームに、スプリングワッシャーで適度な圧力を加えて固定し、

磁気回路を支柱に押し付けます。

 

磁気回路の固定方法は、他にも様々なパターンが思い浮かぶのですが、

今のところこの方法が現実的だと感じています。

 

 

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試聴感想

支柱を加えたことで、明快かつ芯のある低音が出てきました。

 

中域から、最低域の幅広い帯域に効果があるのですが、

特にバスレフダクトの効く帯域での質感向上は目覚ましいものでした。

 

また、オルガンのペダルは、小音量であっても存在感が消えずに、
明快かつ重厚な響きを聴かせます。

 

この支柱の追加は、ひとまず成功と言っていいと思います。

 

以前に、小型2wayスピーカーのツイーターで試したときは、

支柱の素材の音色が乗ってしまい難儀したのですが、

サブウーハー帯域であれば、素材由来の響きは無視できるのでしょう。

 

 

次回は、振動板について試したことがあるので、それを報告しようと思います。

どうぞお楽しみに!

<製品紹介>

サブウーハーの自作(11)(試作サブウーハー②(23Lバスレフ型)の周波数特性

前回の続きで、17cm口径ウーハーに、やや大きめの23Lのバスレフ箱を組み合わせた、試作サブウーハー②。今回はその周波数特性について見てみます。

 

用意したダクトは、213mm、150mm、100mmの3段階。ダクト内径は全て30mmです。

75mmも用意したのですが短すぎたので、この3種類のデータのみ掲載します。

 

 

総合特性

まず最初に示すのが、ダクトとドライバーの総合特性です。

ダクトとユニット中心からの等距離で測定する簡易的な測定ですが、低域の下降特性を見るには十分な測定ができます。

 

213mmダクト

 

150mmダクト

 

100mmダクト

 

20Hz~50Hzの特性が三者三様なのが分かるでしょうか。

 

最も長い213mmのダクトでは、60Hz付近から22Hzまでまっすぐに降下。-10dBで20Hzまで伸びています。

 

最も短い100mmのダクトでは、35Hzまでフラット。そこから急速に音圧が低下し、-10dBで25Hzです。

 

150mmダクトでは、その間の特性になりました。

 

 

低域の特性と聴感

低域の下降特性は、どれがいいか人によって判断が異なる結果になりがちですが、私は多少は「撫で肩」特性にするのが望ましいと思っています。

 

フラット特性の100mmは、かなり積極的な低音の鳴りっぷりが好ましく感じられましたが、オルガンやEDMの低音域で沈み込みの甘さを感じる場面もありました。

 

150mmでは、低音のキレや質感がぐっと向上。若干シェイプアップされた低域ではあるものの、最も違和感が少ない鳴り方でした。

 

213mmは、ここぞ というときに低音のパワーが出きらない感じです。ズシンズシンという最低域は感じられるのに、グリンと鳴ってほしいときに鳴らない…という印象でした。

クロス周波数を少し変更するぐらいでは、これらの全体の印象は変わりませんでした。今回は、213mmでは少しダクトチューニングが低すぎたのでしょう。

 

 

100mmと150mmは、比較試聴してやっと良否を判別できるぐらいの差で、どちらでも正解かもしれません。また、部屋の定在波の出方によっても結果は変わるかもしれませんね。

 

今回は150mmが、撫で肩の低域ロールオフ特性であるだけでなく、音楽で重要な30Hzにもピークをもつダクトチューニングであり、好ましい結果になりました。

 

 

ダクトの放射音圧特性

次に、それぞれのダクト放射音圧を見てみます。

 

ダクト共振周波数fdがどこに出るか、だけではなく、

fdでの音圧と、それ以外の付帯音のバランスにも注目です。

 

213mmダクト (fd=22Hz)

 

150mmダクト(fd=22Hz~25Hz)

 

100mmダクト(fd=28~32Hz)

 

ダクト共振周波数fdは、幅を持たせた表記になっています。インピーダンス特性の凹と、上に掲載したダクト直前周波数特性(凸)の双方から判断して、fdとしました。

 

213mmは、fdが低いだけでなく、他の帯域(=ノイズ)に埋もれてしまっています。これは一概に悪いことではありませんが、低すぎる共振周波数は、バスレフとしての動作を難しくするものと思われます。

 

 

まとめ

今回は3段階のダクト長の結果を掲載しました。共振周波数や、低域の下降度合いなど、教科書通りの結果でありながら、聴感とのバランスを取りながら進める面白さもありました。

 

次回は、「スピーカーユニットの固定方法」について実験したので、紹介しようと思います。どうぞお楽しみに!

 

 

 

<製品紹介>

サブウーハーの自作(10)(試作サブウーハー②(23Lバスレフ型)の試聴

前回は15Lの少し小さめのバスレフ箱を使ったサブウーハーを試聴しました。今回は、23Lと大き目のバスレフ箱で評価を行います。(25.06.21追記)

 

外観

正面から見ると、あまり変わらないですが…

 

サブウーハーの奥行が伸びており、容量が増えています。

15L→23Lという数字以上に大きく感じますね。

 

 

試聴は、前回と同じ約60Hzクロスで行いました。

組み合わせるスピーカーも、前回と同じ「TAD TSM-2201-LR」です。

 

 

試聴感想

まず、この23L箱のサブウーハーで、良かった点を挙げてみます。

 

15L箱では感じられなかった、超低域のパワー感が出てきました。

40Hz付近の旋律がしっかりと描かれ、サブウーハーとして期待される帯域まで十分にならすことができています。

 

JAZZのウッドベースは軽快に音階を刻み、スムーズな質感です。
SWの追加により音に潤いが出る感じがありました。

 

オーケストラのグランカッサでも、フワッとした風圧を感じる音です。

 

 

しかし、今一つな点も多かったのが、この23L箱でした。

 

まず、100Hz前後の低域に甘さがあるように感じられ、

低域の質感は課題が残ってしまいました。

 

このためか、サブウーハーを追加しても(確かに悪さはしないけれど)、音の質感の改善には至りません。

クロス周波数を変えたりしてみましたが、大枠の印象は変化しませんでした。40Hz付近の厚みに対して、80~150Hzの解像度が追い付いていない感じです。

 

たとえば、宇多田ヒカルの楽曲は、ベースの低音は余り感じにくいものでした。最低域のレスポンスはズシンズシンと来るが、その上のベースギターは控えめ。

 

クロス周波数を60Hzから80Hzへ上げると、グーグーという100Hz付近が出てくるのですが、キレがあまりなく中低域とのマッチングが良くありません。
鳴っているようで鳴ってくれないもどかしさがありました。

 

 

ダクトの交換

ちょっとこのままでは、せっかく作った23L箱が報われないので、バスレフダクト長を調整してみました。

 

 ダクトを213mm→150mmへ。

 

バスレフダクトを150mmへ短くした状態で試聴してみます。

JAZZでは、ウッドベースもたっぷりとした量感で鳴るようになり、ゆったりとした感触に変わります。


宇多田ヒカルやアニソンの低音は、音階の明瞭さやスピード感は若干不足していますが、幅広い帯域でベースの存在感が出るようになったのは好印象です。


パイプオルガンは、静かで距離感のある低音。
グランカッサはホールの響きとよく馴染んでいます。打音の衝撃(アタックの描写)はあと一歩欲しいところでしょうか。

 

 

さらにダクトを短くしてもいいような気はしますが、次回は23Lバスレフ型サブウーハーの周波数特性を見ながら、これらの音の違いの原因について考えてみようと思います。

 

 

 

<製品紹介>

サブウーハーの自作(9)(試作サブウーハー①(15Lバスレフ型)の測定

前回の続きで、15Lの小さめの箱を使ったサブウーハーの試作です。

いくつか測定をしたので、データを載せておきます。

 

 

周波数特性(距離10cm)

よく言われる「低域再生下限」は、-10dBで25Hz。

サブウーハーとしてはまあまあな値です。

 

穏やかなロールオフ特性が、良好な低域質感を物語っています。

 

 

 

ドライバーの周波数特性

ユニット直前の周波数特性。

20~25Hzに凹があり、ドライバーにしっかりロードがかかっているようです。

 

 

バスレフポートの周波数特性

バスレフポートからの出力は、25~35Hzに緩やかなピークがある形。


ピーク音圧の凸は穏やか。箱容量を小さくすることはダクト共鳴を弱める方向になるので、箱容量はこの15Lが最小になりそうです。

 

 

インピーダンスを見ると、凹となるダクト共振周波数は28Hz付近でしょうか。

 

 

次回からは、箱容量を15Lから23Lに拡大した、大きいタイプの箱の試聴をしていきます。

どうぞお楽しみに!

 

 

<製品紹介>